官民連携の事例として、『大分県』と『オートバックスセブン』による包括連携協定の詳細についてインタビューを交え、レポートをまとめたいと思います。
オートバックスセブンさんと言えば、カー用品やカーメンテナンスなど、車関連の企業というイメージで誰でも知っている有名な企業さんです。
そんな有名な企業だからすんなり官民連携がうまくいったのか?と言えばそうではなく、大分県と包括連携協定が決まるまで苦労があったそうです。
大分県以外にも、全国の自治体にアプローチをしたものの、ある問題に直面したと言うオートバックスセブンのICTプラットフォーム推進部長の八塚昌明さん。
それは、
これが全然マッチしない、ということ。このミスマッチを解消すべく努力しますが
と、時間が解決するでもなく自治体との話し合いが一向に進まなかったそうです。
そこで縁あって、官民クラウドの前身となるサービスで、地域が抱える本当の課題とニーズが明確になりました。
「自分たちの“思い込み”ではなく本当の声としての課題やニーズが明確になることで、より具体的に的確に自治体との連携の提案ができ、無事ミスマッチを解消することができました。これがいちばん大きな成果でした」(八塚さん)
本格始動した官民クラウドの魅力について八塚さんから3つ挙げていただきました。
官民クラウドは、全国ではじめて自治体約3万件の課題をデータベース化しています。
都道府県単位、課題のカテゴリ単位、キーワードでもデータベースから課題をピックアップすることができます。
八塚さん達の次のステップである他の自治体との官民連携でも、これが大いに役立つと考えてくれています。
なぜなら、多くの自治体は、共通の課題を抱えているケースが多いからです。
「今までは課題やニーズが不明だったので自治体へのコンタクトは飛び込み営業そのもので時間も労力もかかっていました。でも、官民クラウドはデータベースとして整理されているので、飛び込み営業ではなく、ピンポイントで見込みのある営業ができます」(八塚さん)
温泉の源泉数・湧出量ともに日本一を誇るおんせん県である大分県。
由布岳“豊後富士”とも呼ばれる人気温泉地・由布院のシンボル、標高1,583メートルの活火山。 |
別府血の池地獄別府温泉にある日本で一番古い天然の地獄と言われています。 |
宇佐神宮全国に4万社あまりある八幡宮の総本社。国宝である八幡造りの本殿は必見です。 |
大分県とオートバックスセブンは、2019年3月19日に包括連携協定を締結しており、大きく8つの分野での官民連携に取り組んでいます。
このうちの「6.女性活躍推進・青少年の育成」の産学官連携として大分県内の2つの高校での取り組み事例を2つ八塚さんにお話しいただきました。
大学との連携はしばしありますが、民間企業が高校の校内に常駐する連携としては日本初の取り組み。
八塚さん達オートバックスセブンの社員が校内ラボに常駐して、生徒さん先生達と授業を通し、地域の課題、その解決を具体的なビジネスにも結びつけるアイディアを具現化するお手伝いをされています。
「課題研究発表会」投票式のゴミ箱で楽しくゴミ削減など斬新なアイディアが目を引きます。 |
「課題研究発表会」通学時の荷物の重さという学生ならではの問題とコロナを関連付けた教材のデジタル化。 |
SDGsの17項目の目標も取り入れた高校生のアイディア発表会は、大人とは違う目線のアイディアが多く、大人でもハッとしてしまうものばかり。
それを実現する技術やプロセスをオートバックスセブンがサポートすることで、ただの夢物語ではなく1つの産業として具現化の可能性を見ることができます。
各班の発表会の様子はYoutubeでも公開されていますので、必見です。
産学官連携として、リアルな商売に触れることを目的とし、生徒考案“煽り運転防止ステッカー”の商品化を約1年かけ実現。
双国高校の生徒たちは、討論に討論を重ね、煽り運転という時事、武器である高校生らしさを出した緩いデザイン、手に取りやすい価格設定というマーケットインを考慮した煽り運転防止ステッカーを考案。
企画生徒さん達が班ごとに商品開発のアイディアを出し合います。最初は手探り・・・何度も議論しました。 |
プレゼン時間をかけ議論し、班ごとのプレゼンを行いました。プレゼンは中間・最終と2回に渡りました |
商品化大分県の地形に手足が生えたオリジナルキャラクターが「あおるなえ~」と大分弁でゆる~く呼びかける |
始めは商品開発の考えが単調で視野が狭かった高校生たちが色々調べ、オートバックスセブンと打合せしていくうちに視野も広くなり、社会に出る前の年齢で大手企業と商品開発を行うという経験は高校生たちにとって貴重な経験になったようです。
官民クラウドでは、今後もオートバックスセブンさんが掲げる他の分野の活躍も引き続き追っていきたいと思います。
オートバックスセブンさんの今後の展開として、第一弾の包括連携協定となった大分県での経験を元に、他県でも積極的に官民連携を進めていく方針とのこと。
官民連携の形は、『随意契約』『プロポーザル』『入札』など様々ですが、『包括連携協定』という“様々な分野”にまたがる民間企業と自治体の協業という1つの形は、地域課題を長期的に包括的でありながら細分化したものでもあります。
企業側の大きなメリットとしては、
にあります。
自治体側の大きなメリットは、
です。
更に、オートバックスセブンさんの見据えている“未来”は、日本だけに留まりません。
今、日本は先進国として高齢化が進んでいますが、これから高齢化を迎えるアジア等の途上国へ、日本での課題解決を実績としたソリューションを持ち込んで役立てたい、という大きな目標をお持ちです。
官民クラウドも、その大きな目標への一端を担えれば、と思っています。